東京地方裁判所 昭和46年(ワ)2136号 判決 1972年7月17日
原告 鈴木静幸
被告 東光化学株式会社
主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は、原告の負担とする。
事実
原告訴訟代理人は、
「一 被告は、別紙目録(一)第一図面から第四図面およびその説明書記載のハンガー、ならびに同目録(二)正面図、背面図、平面図、底面図および右側面図に各表示する意匠を有するハンガーを、いずれも業として製造し、譲渡し、または譲渡のために展示してはならない。
二 被告は、その本店、営業所および工場に存する前項の物件を廃棄せよ。
三 被告は、原告に対し、金一、〇〇〇、〇〇〇円ならびにこれに対する昭和四六年三月二七日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。
四 訴訟費用は、被告の負担とする。」
との判決を求め、
その請求の原因として、
「一(一) 原告は、つぎの実用新案権(以下「本件実用新案権」といい、その考案を「本件考案」という。)を有する。
登録番号 第七七六四二五号
考案の名称 ハンガー
出願 昭和三八年一〇月二二日
出願公告 昭和四〇年一月一八日
登録 昭和四〇年八月一七日
(二) 本件考案の実用新案登録出願の願書に添付した明細書の実用新案登録請求の範囲は、つぎのとおりである。
「山形をなす硬質合成樹脂製のハンガー主体aは、その頂辺を形成する左右片3、4が垂直な板状でこれに続く裾部5、6の上縁を徐々に前側に彎曲延出させてその終端に逆U字状部7、8を形成し、かつこれら裾部5、6および逆U字状部7、8を上記左右片3、4に対し前方に緩やかに彎曲させ、逆U字状部7、8に垂設した連繋片9、10間に上面を弧状とし前後面をくぼませた横桟11を架設すると共に、ハンガー主体aの頂点部に基端の膨大部2を埋設して回動自在としたフツク1を挿着したことを特徴とするハンガー。」
(三) 本件考案の要旨および作用効果の特徴は、つぎのとおりである。
(1) 本件考案の要旨
(イ) 山形を成す硬質合成樹脂製のハンガー主体aは、その頂辺を形成する左右片3、4(記号および番号は、別添実用新案公報のものを示す。以下同じ。)が垂直な板状で、これに続く裾部5、6の上縁を徐々に前側に彎曲延出させて、その終端に逆U字状部7、8を形成し、かつ、これら裾部5、6および逆U字状部7、8を前記左右片3、4に対し、前方に緩やかに彎曲させていること。
(ロ) 逆U字状部7、8に垂設した連繋片9、10間に上面を弧状とし、前後面をくぼませた横桟11を架設していること。
(ハ) ハンガー主体aの頂点部に基端の膨大部2を埋設して回動自在としたフツク1を挿着したこと。
を特徴とするものである。
(2) 作用効果
(イ) 全体的形状を人体の肩部に相似せしめたので、洋服等を自然な格好で掛けることができ、これに型くずれをさせることがない。
(ロ) 二つ折して掛けるズボン等に折目を派生させる虞れがなく、しかも、この横桟は、連繋片間に架設したもので、ハンガー主体の逆U字状部との間に空隙を有するため、ズボン等の掛け外し作業に支障を与えたりすることがないのはもちろん、この横桟は、逆U字状部の下方間に位置し、ハンガー主体の頂部より前方にあるので、これに掛けたズボン等がハンガー主体に掛けた洋服等に悪影響をおよぼすことがない。
(ハ) 合成樹脂製であるから、成型が簡単であるとともに、軽量で出荷輸送、取扱いに至便であり、かつ、ハンガー主体は、同一の厚さの合成樹脂板を撚回させて形成したかのごとき形状で、特に肉厚部を必要としないため材料も節減できる。
(3) 考案の特徴
本件考案の構成および作用効果の特徴は、要するに、硬質合成樹脂によつて成型する場合に成型性を最もよくするためと、使用上の機能性と形態美を十分に調和させるための二つの目的から、ハンガーの構成に前記(1)(イ)(ロ)(ハ)のごとき考案を実施したことにある。
二(一) 原告は、本件考案に係るハンガーに関し、つぎの意匠権(以下「本件意匠権」といい、その意匠を「本件意匠」という。)を有する。
登録番号 第二五五九〇二号
意匠に係る物品 ハンガー
出願 昭和三八年一〇月一六日
登録 昭和四一年一月一四日
登録意匠 別添意匠登録証添付写真のとおり
(二) 本件意匠の構成
本件意匠は別添写真に現わされたハンガーの意匠で、二等辺三角形状の枠体の頂面に欠円形フツクの垂下部を挿着し、前記枠体の高さは、底辺の二分の一よりやや小さく、この枠体の左右斜辺板の合流頂点部は、上側辺が丸形山状に膨出し、下側辺が逆に弧状に凹み、やや前かがみ状態の板状をなし、この板状をなす合流頂点部に続く前記左右斜辺板は、前側を開口させた弧状をなすとともに、その上縁を前記頂点部の上縁に連続させて徐々に前側に彎曲延出させ、その延出度を左右斜辺板の裾部において最大とし、かつ、これら左右斜辺板は、その頂点部より裾部側を全体として前方に緩やかに彎曲させ、その全体的形状を人体の肩部に相似せしめ、枠体の底辺をなす横桟は上面を円弧状にし、前面、後面にくぼみをもたせ、その左右端をたがいに内側に少なく彎曲させて左右連繋部を構成し、左右斜辺板の裾部後側の下縁に連続するものである。
三 被告は、別紙目録(一)、(二)記載の物件(ハンガー――以下「被告物件」という。)を業として製造、販売している。
四 本件考案との対比からみた被告物件の特徴
(一) 構成上の特徴
被告物件は、別紙目録図示説明のとおり、ハンガー主体aが、その頂辺部1を形成する左右片2、3を垂直な板状とするとともに、この左右片2、3に続く裾部4、5の上縁4′、5′を徐々に前側に彎曲して、その終端に逆U字状部6、7を形成し、かつ、前記裾部4、5および逆U字状部6、7を前記左右片2、3が形成する頂辺部1に対し前方に緩やかに彎曲した形状をなしていることにおいて、本件考案の最も重要な構成である前記一(三)(1)(イ)の構成と軌を一にする。
さらに、逆U字状部6、7に垂設した連繋片8、9間に横桟10を架設していること、およびハンガー主体aの頂点部に基端の環状溝11を埋設して回動自在としたフツク12を挿着していることにおいても、前記一(三)(1)の(ロ)(ハ)の構成と軌を一にする。
(二) 作用効果上の特徴
考案の主要な構成を等しくしている結果、その作用効果についても、本件考案の前記一(三)(2)(イ)(ロ)(ハ)と共通である。
五 本件考案と被告物件との比較
(一) 被告物件は、別紙目録図面およびその説明のとおり、逆U字状部6、7に垂設の連繋片8、9間に架設した横桟10が断面「状であつて、本件考案における横桟11が前後面をくぼませているのと若干相違している。
(二) また、被告物件は、別紙目録図面のフツク12の基端に環状溝11を形成しているのに対し、本件考案のフツク1は基端に膨大部2を形成して、それぞれ所定の目的を達成しようとしている点においても若干の相違がある。
(三) しかしながら、右二点の相違は、設計上の微差にすぎず、これがため両者間に作用効果上格別の差異を生ぜしめるものではない。かえつて、前記四(一)(二)に指摘したごとく被告物件と本件考案とは、基本的構成はもちろんその作用効果を全く共通にしているものである。
したがつて、被告物件は、本件実用新案の技術的範囲に属し、被告の実施行為は原告の実用新案権を侵害する。
六 被告意匠の構成
被告物件の意匠(以下「被告意匠」という。)は、別紙目録(二)の記載の写真に表示されたハンガーの意匠で、二等辺三角形状の枠体の頂面に欠円形フツクの垂下部を挿着し、前記枠体の高さは底辺の二分の一よりやや小さく、右枠体の左右斜辺板の合流頂点部は、上側面が丸形山状に膨出し、下側辺が逆に弧状に凹み、かつ、やや前かがみの板状をなし、右板状合流頂点部に続く前記左右斜辺板は、前側を開口させた弧状をなすとともに、その上縁を前記頂点部の上縁に連続させて徐々に前側に彎曲延出させ、その延出度を左右斜辺板の裾部において最大とし、かつ、これら左右斜辺板は、その頂点部より裾部側を全体として前方に緩やかに彎曲させ、その全体的形状を人体の肩部に相似せしめ、枠体の底辺をなす横桟は、上面を円弧状にし、前面をくぼませ、後面をほぼ垂直にし、その左右端より上方に延出した板状連繋部を左右斜辺板の裾部の後側下縁に連続させるものである。
七 本件意匠と被告意匠の類否
本件意匠と被告意匠とを対比すると、両者は、その構成において、左記各点が全く一致している。
(1) 高さが底辺の二分の一よりやや小さく、二等辺三角形状の枠体の頂面に欠円形フツクの垂下部を挿着していること。
(2) 右枠体の左右斜辺板合流頂点部は、上側辺が丸形山状に膨出し、下側辺が逆に弧状に凹み、やや前かがみの板状をなすこと。
(3) 右合流頂点部に続く前記左右斜辺板は、前側を開口させた弧状をなすとともに、その上縁を前記頂点部の上縁に連続させて徐々に前側に彎曲延出させ、その延出度を左右斜辺板の裾部において最大としていること。
(4) 前記左右斜辺板は、その頂点部より裾部側を全体として前方に向け緩やかに彎曲させて、その全体的形状を人体の肩部に相似せしめていること。
(5) 枠体の底辺をなす横桟の左右端を左右裾部の後側下縁間に上方に延出する連繋部によつて横架していること。
以上各部の一致点は、ハンガーの外観上最も注意を惹く正面、背面、平面、底面および側面におけるものであり、これを総合して意匠全体について観察すると、両者は、意匠上の構成要素中、要部とみられる部分すなわち二等辺三角形の枠体の縦横の比、枠体を構成する左右斜辺板自体の彎曲状態および斜辺板合流頂点部の形状において、著しく類似し、全体的立体感とその形態において意匠的審美感を共通にするものである。
したがつて、被告の本件実施行為は、原告の意匠権を侵害するものである。
八 被告に対する請求
(一) 被告は、被告物件を業として製造販売し、原告の本件実用新案権および意匠権を侵害しているので、その侵害の停止および予防を請求する。
(二) 被告は、被告物件が本件登録実用新案ならびに登録意匠の権利範囲に属することを知りながら、または過失によりこれを知らないで、昭和四三年八月頃から今日に至るまで被告物件を金額にして二、〇〇〇万円を下らない数量を製造販売したものと推定せられる。
原告は、被告の右侵害行為により原告が本件実用新案権および意匠権実施の対価として通常受けるべき金銭の額、すなわち、実施料額相当の得べかりし利益を失い、同額の損害を被つたので、本件相当実施料であるハンガー卸売価格の五パーセント(実用新案権および意匠権について同率とし、その合算分)を前記被告物件製造販売価格に乗じた額金一〇〇万円の損害金と本件訴状が被告に送達された日の翌日である昭和四六年三月二七日から右支払済まで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。」
と述べた。
被告訴訟代理人は、主文と同旨の判決を求め、
答弁ならびに主張として
「一 請求原因一のうち(一)、(二)、および(三)の(1)、(2)、同二のうち(一)、同三は、いずれも認める。
二 請求原因八は否認する。
三 請求原因二の(二)のうち、本件意匠の特徴が、人体の肩部に相似した形状にある旨の主張は争う。
四(一) 原告は、本件考案の構成を(イ)全体形状、(ロ)横桟、(ハ)フツクの挿着の三要件に分析し、かつ、これらの構成の効果として、(イ)型くずれを起さない、(ロ)横桟を連繋片間に架設したので逆U字状部との間に空隙を有するためズボン等の掛外しに支障をきたさない。また、横桟は、ハンガー主体の頂部より前方にあるので、洋服に悪影響を及ぼさない、(ハ)合成樹脂製で特に肉厚部を有しないため材料を節減できるものであると主張する。
(二) ところで、ハンガーの全体的形状を人体の肩部に相似せしめるよう順次前傾せしめることは従来慣用の手段であつて、このことが特に本件考案の重要な要素を構成するものではない。それのみならず、被告物件は、本件考案の構成に不可欠な要素である(ロ)の構成すなわち、「逆U字状部7、8に垂設した連繋片9、10間に上面を弧状とし、前後面をくぼませた横桟11」という構成を有せず、主体の湾曲端部に直接に横桟を架設したものであつて、原告主張の(ロ)の効果を有しない。すなわち、本件考案は、ハンガー主体裾部5、6の終端である逆U字状部7、8の先端に、一見丸棒状の連繋片6、10を垂設し、この丸棒状の連繋片9、10の下端間に横桟11を架設して成るものである。したがつて、ハンガー主体裾部5、6の終端である逆U字状部7、8の先端と、横桟11の両端とは、丸棒状の連繋片9、10によつて夫々連繋されているので、逆U字状部7、8の先端と、横桟11の両端で成る懐は大きく、かつ、深い。かくの如く、懐が大きく、かつ、深いと云うことは、幅の広いズボンでも余裕をもつて横桟11に掛けることができる利点を有する。これに対し、被告物件は、ハンガー主体裾部の終端である片仮名のフ字状部の各先端と、横桟の各端とは、本件考案のような丸棒状の連繋片によつては連繋されておらず、両者は直接連結されているのである。しかも、被告物件においては、前記のように、片仮名のフ字状部の各先端と、横桟の各端とが直接連結されているため、連結部の強度が得られず、したがつて、連結部の空隙(懐)に三角形状の盲片を介在させて、連結部の強度を得るようにしてある。
右のように、被告物件にあつては、ハンガー主体裾部の終端である片仮名のフ字状部の各先端と、横桟の各端とが直接連結されていること、および、この連結部の空隙(懐)に三角形状の盲片が介在されていることから、連結部分の懐は、本件考案に比較して極めて小さく、かつ、浅いので、幅の広いズボン等は余裕をもつて掛けることができない。
(三) 次に、本件考案にあつては、横桟11が、逆U字状部7、8の下方間に位置し、ハンガー主体の頂部よりも前方に在る。
したがつて、横桟11に掛けたズボン等が、ハンガー主体に掛けた洋服等に悪影響を及ぼさない利点がある。
これに対し、被告物件にあつては、横桟と、ハンガー主体の頂部とが一直垂線上にあるため、横桟に掛けたズボン等が、ハンガー主体に掛けた洋服等に悪影響を及ぼす欠点がある。
(四) さらに、原告も認めるように、被告物件は、基端に膨大部(2)を有するフツクを埋設したものではなく、フツク(12)の係止部は環状溝として、これを埋設している点で異なる。
原告は、この点について、設計上の微差であると主張するが、フツクの基端に膨大部を設けるときは、その膨大部に対応するように、主体の肉厚を大にしなければならず、このことは、加工面においても、不必要な工数、材料を必要とするものであるから、この種の合成樹脂製ハンガーの構造の一部としてみるときは、決して設計上の微差とは云い得ないのである。
(五) 原告は、また、本件考案の構成の特徴として、「ハンガー主体は同一の厚さの合成樹脂板を撚回させて作成したかの如き形状で特に肉厚部を必要としないため材料も節減できる。」と主張する。(公報第4図参照)。そうであるとすれば、ハンガー主体の構成においても被告物件は異なる。被告物件の主体は、各部分において強度を維持するため、不均一な肉厚により構成されているものであつて、その意味において、本件実用新案の規定である「終端に逆U字状部7、8」は形成されてはいないのである。
以上、いずれの点においても、被告物件は、本件考案の構成要件を充足せず、したがつて、当然のことながら、本件考案の有する作用効果を有しないのである。
五 本件意匠について。
本件意匠と被告意匠とを対比すれば一見して明らかなように、被告意匠は、ハンガー主体と横桟とを結ぶところのゆるやかに曲つて垂下する連繋部を有しない。
そして、この差異に基づき、本件意匠の右側面図および甲第三号証で明らかなように、本件意匠では、横桟はハンガー主体とは別箇のものであり、連繋部によつて両者が連結されているのが特徴的であるのに対し、被告意匠においては、ハンガー主体と横桟とは同一体に構成されているという視覚的認識が発生する。
同時に、このような構成上の差異は、みる者をして、本件意匠は全体が優雅柔軟で、かつ、内部空間が広々としていて、ズボン等をかけやすいという機能的な美感を生ぜしめるのに対し、被告意匠には右のような優美さや、ズボン等のかけ易さという感じはなく、全体として鋭角的感じを与える点で、両者は視覚的印象が全く異なる。
要するに、両者は、ハンガーであるという点のみについて一致するにすぎず、ハンガーの意匠としては、全く別箇の系統に属し、類否を論ずるまでもないところである。」と述べた。
原告訴訟代理人は、被告の主張に対する反論として
「一(一) およそ、実用新案は、その構成要件全体の有機的結合中に技術的思想を表現するものであり、考案における各構成部分は、統一的に結合され、全体との相関関係において一個の考案を構成するものである。したがつて、権利の技術的範囲を解釈するに当つては、各構成要件部分の特徴、作用効果を当該考案全体の構成との相関々係において、これを総合的に考案し、解釈しなければならないことはいうまでもない。
ところで、被告の主張するところは、要するに、「ハンガーの全体的形状を人体の肩部に相似せしめるよう順次前傾せしめることは、従来慣用の手段であつて、このことが特に本件考案の重要な要素を構成するものではない」とし、結局、本件考案に不可欠の構成要素は「垂設した連繋片」と「上面を弧状とし、前後面をくぼませた横桟」である旨主張するもののようである。
しかしながら、被告の右の主張は、構成要件の各部分を断片的に抽出し、一面的な独自の解釈をほどこしたものであつて、その解釈方法において根本的に誤りがある。
本件考案の要旨および作用効果の特徴については、既に述べたが念のため指摘しておきたいことは、本件考案が硬質合成樹脂により一体的に成型したハンガーに係るものであるということである。
すなわち、「二つ割り式金型」を使用して、同時に一体的に硬質合成樹脂を射出成型する製造方法を技術的に前提とし、一体成型の硬質合成樹脂製ハンガーとした前記構造全体にこそ、本件考案の新規性が存するものである。
本件考案の出願時において、ハンガー枠体が一体的に二等辺三角形環状体を形成し、その成型のときから回動自在のフツクを埋設し、枠体の山形部分の断面形状が、両側を開口させた弧状をなし、かつ、その上縁が徐々に前側に彎曲、延出し、両袖部に下がるにしたがつて緩やかに前方に彎曲させ、終端部ではほぼ逆U字状をなし、その延長下端の連繋部で横桟と一体をなすもの、すなわち、本件考案と構造を等しくするハンガーが存在したと推定できる資料は存しない。
被告の主張するような「ハンガー全体の形状を人体の肩部に相似せしめるよう順次前傾せしめる」構成は、木製ないし合板製のものであるか、合成樹脂製であつても、左右片、横桟等の部材の各個を機械的に結合したものにみられたにすぎず、「従来からの慣用の手段」といわれる技術は、一体的成型による硬質合成樹脂製ハンガーに係る本件考案とは何のかかわりも持たないことは明白である。以下個別的に被告の主張に対し反論する。
(二) 被告は、「逆U字部に垂設した連繋片間に上面を弧状とし、前後面をくぼませた横桟」という構成が被告物件に欠如している旨主張する。
なるほど、本件考案の請求の範囲の記載中には、「垂設した連繋片」との表現がとられているが、明細書の図面に明らかなとおり、連繋片は、逆U字状部の下端が狭ばまり内側に彎出したものであつて、「垂設」という用語に拘泥することは適切ではない。
被告物件の連繋部は、考案の明細書に図示した連繋片に比してその形状、長さに差異がある。しかしながら、考案における明細書の図面は、あくまで一個の実施例であり、とくに、連繋部の図示説明は、他の部分との区別を設示するための便宜によるものであつて、本件考案の要件として、その形状、大きさに限定があるものではない。要件としては、逆U字状部下端と横桟との間に一体をなす点にあり、以下にのべる作用効果をもつものである。
被告物件は、逆U字状部下端の後縁と横桟との間に三角板状の連繋部を有しており、これがあることによつて、逆U字状部と横桟との結合する内側面に鋭角を埋めた空隙をつくり、「ズボン等の掛け外し作業に支障を与えたりすることがない」という作用効果は、本件考案と共通するものである。
したがつて、実施例の図形との形式的対比において、被告物件には「垂設した連繋片」を具備していないとみなすことは当をえない。したがつて、被告物件の横桟は、主体の彎曲部に直接に横架したものである旨の主張も被告の独自の解釈である。
さらに、本件考案と被告物件の各横桟は、いずれもハンガー主体の一体的構成部分であつて、ズボン等を二つ折りして掛けるものであるという目的において、また、上面を弧状にし折目、しわなどを防止すること、ハンガー主体の強度を増大することにおいて、作用効果も同一である。
のみならず、本件考案の連繋片および横桟の構成と被告物件のそれらが、出願時の技術上から容易に置換可能の範囲に属するものであることはもちろんである。
(三) 被告は、本件考案におけるハンガーのフツクは、その基端に膨大部を埋設しているのに対し、被告物件の当該部位は、基端に環状溝を有すること、考案の当該膨大部位は主体の肉厚を要し、加工上材料等を余計に必要とするから、被告物件との差異は単純な微差ではない旨主張する。
合成樹脂の射出成型のさいに、予めフツクを埋設することは、その基端が膨大部(釘頭状のもの)であるか、環状溝であるかによつて、製造工程や材料に殆んど差異はない。このことは経験上まつたく明白である。のみならず、フツク基端の抜脱防止性と成型後の回動自在性において、両者は技術的目的を同じくし、また、その構成が出願時において技術的に置換可能であつたことも容易にうかがいうるところである。
(四) 被告は、被告物件の主体は、各部分において強度を維持するため、不均一な肉厚により構成されている点において本件考案と構成を異にする旨主張している。
しかしながら、この点について、本件考案の「詳細な説明」の記述は、つぎのとおりである。
「ハンガー主体aは同一の厚さをもつた合成樹脂板を撚回させて形成したかのごとく所定の型を使用して成型したもの」「ハンガー主体aは同一の厚さの合成樹脂板を撚回させて形成したかのごとき形状で特に肉厚部を必要としないため材料も節減できる」。
この説明は、結局本件考案のハンガー主体の形状について、外観的な特徴と特別に肉厚部を必要としないという効果を指摘したもので、「同一の厚さをもつた合成樹脂板を撚回して形成したかのごとき形状」に意味があるのであつて、この外形を左右しない程度の肉厚の不均一性まで排除する趣旨でないことは自明である。
したがつて、被告の前記主張も失当である。
二 登録意匠に対する主張について
被告は、被告意匠は、ハンガー主体と横桟とを結ぶゆるやかに曲つて垂下する連繁部を有しないので、ハンガー主体と横桟とは同一体に構成されているという視覚的認識を生じ、これによつてハンガー全体の視覚的印象を異にする旨主張している。
本件意匠と被告意匠は、左右斜辺板の裾部と横桟の連繋状態に形状的な差異があり、このため前記裾部終縁と横桟との間隔にも差異を生じていることは事実である。
しかしながら、意匠全体について総合的に観察すれば、両者は、フツクの挿着態様、二等辺三角形状の枠体の縦横の比、枠体を構成する左右斜辺板合流頂点部の形状、斜辺板自体の延出形態、および彎曲状態、枠体の底辺における上面円弧状前面くぼみをもつた桟の横架、枠体が硬質合成樹脂による一体的成型のハンガーを表現する等本件意匠の要部において明白な共通点を有する。したがつて、被告主張の前記差異は、結局相対的に細部において印象上の影響を及ぼしているに止まり、被告意匠は、本件意匠に類似するものである。」
と述べた。
立証<省略>
理由
一 原告が本件実用新案権および本件意匠権の権利者であること、ならびに被告が被告物件を業として製造販売していることについては、いずれも当事者間に争いがない。
二 そこで、まず被告物件が本件登録実用新案の技術的範囲に属するものであるかどうかについて判断する。
本件考案の要旨が、
(1) 山形を成す硬質合成樹脂製のハンガー主体は、その頂辺を形成する左右3、4(番号は別添実用新案公報の番号を示す、以下同じ。)が垂直な板状で、これに続く裾部5、6の上縁を徐々に前側に彎曲延出させて、その終端に逆U字状部7、8を形成し、かつ、これら裾部5、6および逆U字状部7、8を前記左右片3、4に対し、前方に緩やかに彎曲させていること、
(2) 逆U字状部7、8に垂設した連繋片9、10間に上面を孤状とし、前後面をくぼませた横桟11を架設していること、
(3) ハンガー主体の頂点部に基端の膨大部2を埋設して回動自在としたフツク1を挿着したこと、
を特徴とするものであることは、当事者間に争いがない。
ところで、本件考案の右構成と被告物件を表示することについて当事者間に争いのない別紙物件目録(一)記載の図面および説明とによれば、被告物件は、ハンガー主体がその頂辺部1(別紙目録(一)添付図面の番号、被告物件の番号については以下同じ。)を形成する左右片2、3を垂直な板状とするとともに、この左右辺2、3に続く裾部4、5の上縁4′、5′を徐々に前側に彎曲して、その終端に逆U字状部6、7を形成し、かつ、前記裾部4、5および逆U字状部6、7を前記左右片2、3が形成する頂辺部1に対し前方に緩やかに彎曲させた形状をなしている点において本件考案の前記(1)の構造と同一であるが、(イ)連繋片8、9面に架設した横桟10が上面を孤状とした断面「状である点および(ロ)フツク12の基端はハンガー主体の頂点部に形成された環状溝11に埋設されている点において本件考案の構造と異ること(このことは原告も自認している。)、および(ハ)逆U字状部7、8に「垂設」した連繋片を有しないという点で本件考案の構造とは異ることを認めることができる。
実用新案は、一般的について、その構成要件全体の有機的結合中に技術的思想を表現するものであり、考案における各構成部分は、統一的に結合され、全体との相関関係において一個の考案を構成するものであるから、権利の技術的範囲を解釈するに当つては、各構成要件部分の特徴、作用効果を当該考案全体の構成との相関関係において、これを総合的に考案し、解釈しなければならないことは、原告主張のとおりである。
しかしながら、ハンガーは、衣類特に洋服類を吊すという目的自体からその構造においておのずから限定を受けるものであつて、ハンガーの本体は必然的に人体の肩部に相似したものになつてくるということは、従来からあるハンガーであることを原告も認める検乙第一号証ないし第三号証の存在により明らかである。
原告は、ハンガー全体の形状を人体の肩部に相似せしめるよう順次前傾せしめる構成は、少なくとも一体的成型による硬質合成樹脂製ハンガーには従来なかつたと主張するが、ハンガー全体の形状を人体の肩部に相似せしめるよう順次前傾せしめる構成のものが公知であつたことは前掲検乙第二号証の存在によつてもこれを認めることができるし、木製ないし合板製のものでそのようなものが存在していたことは原告自身もこれを認めるところである。しかして、本件考案の要旨が一体的成型による硬質合成樹脂製のものにおいて、前記のようなハンガー全体の形状を人体の肩部に相似しめるよう順次前傾せしめる構成のものであることに尽きるものであるとしえないことは、本件実用新案登録請求の範囲の記載から明瞭である。
そうすると、本件実用新案の技術的範囲は、前認定の(1)ないし(3)に掲記した構造を有するハンガーに限られ、被告物件は前記(イ)ないし(ハ)の点において本件考案にかかるハンガーと異なつた構造を有しており、本件実用新案の権利範囲に属しないものというべきである。
原告は、前記(イ)および(ハ)の相違点について、次のように主張する。すなわち、本件実用新案登録請求の範囲の記載中には「垂設した連繋片」の表現があるが、「垂設」という用語に拘泥することは適切でなく、本件考案においては連繋片の形状、大きさに限定はなく、かつまた本件考案においても被告物件においても、連繋片は同様に主体の逆U字状部下端と横桟との間に一体をなしており、さらに被告物件の三角形状の連繋片も、これがあることによつて、逆U字状部と横桟の結合する内側面に鋭角を埋めた空隙をつくつて、「ズボン等の掛け外し作業に支障を与えたりすることがない」という本件考案のもつ作用効果を有しているし、また、横桟はズボン等を二つ折りにして掛けるものであるという目的の点で、また上面を孤状にし折目、しわなどを防止すること、ハンガー主体の強度を増大するという作用効果の点でも両者同一であると。
しかしながら、連繋片に関する点は、本件実用新案公報の考案の詳細な説明の項中に「逆U字状部7、8の先端には連繋片9、10が垂設していてその下端間に、上面を孤状としかつ前後面をくぼませた横桟11を架設している」と記載されており、図面第一図および第三図には垂設された丸棒状の連繋片の表示があり、しかも、この連繋片の効果として、「しかもこの横桟11は連繋片9、10間に架設したものでハンガー主体aの逆U字状部7、8との間に空隙を有するためズボン等の掛け外し作業に支障を与えたりすることがない」との記載があり、このことよりすれば、ハンガー主体の逆U字状部と横桟との間に空隙を有するように逆U字状部から垂設された連繋片を有することが、本件考案の一つの要件であると考えられ、被告主張のように、そのような構造ももたず、ひいてまた、この点について原告主張の作用効果を有せず、本件考案に劣ると認められる被告物件は、本件実用新案の技術的範囲に属しないというべきである。また、横桟はもちろんズボン等を二つ折りにして掛ける目的を有するものであり、本件考案の場合においては、ハンガー主体の強度を補強する役目をも有しているものであることは明らかであるが、実用新案登録請求の範囲にわざわざその横桟の形状まで記載してあるということは、その横桟の形状もまた考案の要旨を構成しているものと解せざるをえない。
以上の理由により、被告物件は、本件実用新案の技術的範囲に属しないものというべきである。
三 つぎに被告物件が原告の本件意匠権を侵害するものであるかどうかについて考える。
本件意匠を表示していることについて当事者間に争いのない別添意匠登録証添付の写真によれば、本件意匠は、ほぼ二等辺三角形の形状をした枠体の頂面に欠円形フツクの垂下部を挿着し、前記枠体の高さは底辺部の水平部分の長さの二分の一にほぼ等しく、枠体の左右斜辺板の合流頂点部は上側辺が丸形山状に膨出し、下側辺が逆に孤状に凹み、やや前かがみ状態の板状をなし、この板状をなす合流頂点部に続く前記左右斜辺板は、前側を開口させた孤状をなすとともに、その上縁を前記頂点部の上縁に連続させて徐々に前側に彎曲延出させ、その延出度を左右斜辺板の裾部において最大とし、かつ、これら左右斜辺板は、その頂点部より裾部側を全体として前方に緩かに彎曲させ、さらに、枠体の底辺部の水平部分と前記左右斜辺板の裾部とは、右裾部から垂直に近い状態で垂下したその後緩かな孤状をなして底辺部の水平部分に続く丸棒をねじつたかの如き形状の連繋片をもつて連繋されているものであると認められる。
一方、被告意匠を表示していることについて当事者間に争いのない別紙物件目録(二)添付の写真によれば、被告意匠は、ほぼ二等辺三角形の形状をした枠体の頂面に欠円形のフツクの垂下部を挿着し、前記枠体の高さは底辺部の水平部分の長さの二分の一にほぼ等しく、枠体の左右斜辺板の合流頂点部は上側辺が丸形山状に膨出し、下側辺が逆に孤状に凹み、やや前かがみ状態の板状をなし、この板状をなす合流頂点部に続く前記左右斜辺板は、前側を開口させた孤状をなすとともに、その上縁を前記頂点部の上縁に連続させて徐々に前側に彎曲延出させ、その延出度を左右斜辺板の裾部において最大とし、その左右斜辺板はその頂点部より裾部に至る部分において背面は前方に緩かに彎曲しているが前面は頂点部から多少屈曲はしているもののほぼ垂直に近い状態で続き、さらに枠体の底辺部の水平部分と前記左右斜辺板の裾部とは、前記底辺部の水平部分の上方から前記左右斜辺板の裾部にかけてほぼ三角形の板状をした連繋片によつて連繋されているものと認められる。
以上のとおりであるとすれば、原告主張のように、本件意匠にかかるハンガーと被告意匠のハンガーとは、フツクの挿着態様、二等辺三角形状の縦横の比、枠体を構成する左右斜辺板合流頂点部の形状、斜辺板自体の延出状態等において相似した点があるとはいえ、両者の連繋片はその形状において相違するし、本件意匠にかかるハンガーにおいては左右斜辺板と横桟とは丸棒状の連繋片を介して連繋され、したがつて二等辺三角形状の内部は広くゆつたりとした感じを与えるのに対し、被告意匠におけるハンガーにあつては左右斜辺板と横桟とは直接に結合し、三角形状の連繋片は単に左右斜辺板と横桟との結合を補強しているに過ぎないかのごとき印象を与え、したがつて二等辺三角形状の内部は狭く、かつ、三角形状の連繋片の存在によつて本件意匠のハンガーに比べて全体としてはば広く角張つた印象を与える点で相違するし、さらにハンガーの頂点部から裾部に至る彎曲の度合いについて前記のような相違がある以上、これを全体的に観察した場合に、両者は視覚的印象を異にし、したがつて被告意匠は本件意匠に類似しないものといわざるをえない。
以上の理由により被告意匠は、本件登録意匠の範囲に属しないものというべきである。
四 以上説明のとおり、被告物件が原告の本件実用新案権および意匠権を侵害することを理由とする原告の本訴請求は、その他の点を判断するまでもなく、その理由がないからこれを失当として棄却することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法八九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 荒木秀一 高林克己 野澤明)
(別紙)
物件目録
(一) 別紙図面に示す構造のハンガー
図面の説明
第1図は正面図、第2図は上面図、第3、第4図はそれぞれ第1図のⅠ―Ⅰ線およびⅡ―Ⅱ線断面図である。
aは山形をなす硬質合成樹脂製のハンガー主体で、このハンガー主体aの頂辺部1を形成する左右片2、3は垂直な板状をなすとともに、この左右片2、3に続く裾部4、5の上縁4′、5′が徐々に前側に彎曲延出して、その終端に逆U字状部6、7を形成し、かつ、前記裾部4、5および逆U字状部6、7を前記左右片2、3が形成する頂辺部1に対し前方に緩やかに彎曲させ、また前記述U字状部6、7に連繋片8、9を垂設して、これら連繋片8、9間には上面を弧状とした断面「状の横桟10を架設し、かつ、ハンガー主体aの頂点部には、環状溝11を有する基端を埋設して回動自在としたフツク12を挿着している。
目 録 (一)
第1図<省略>
第2図<省略>
第3図<省略>
第4図<省略>
図<省略>
目 録 (二)
図<省略>
実用新案公報 昭四〇―一五三七(公告昭40・1・18)
ハンガー
図面の簡単な説明
第一図は正面図、第二図は上面図、第三図は第一図のI―I線拡大断面図、第四図は第一図のII―II線拡大切断端面図である。
考案の詳細な説明
本考案は硬質合成樹脂により一体的に成型したハンガーに係り掛けた洋服等に型くずれさせることのないようにしたものである。
これを図面について説明すると、aは山形を成す硬質合成樹脂製のハンガー主体で、その頂点部に挿着のフツク1は、基端の膨大部2を該ハンガー主体aの成型時に予め埋設せしめたものでこの膨大部2により抜脱を阻止されかつハンガー主体aに対し回動自在である。
ハンガー主体aは同一の厚さをもつた合成樹脂板を撚回させて形成したかのごとく所定の型を使用して成型したもので、即ち上記ハンガー主体aの頂辺を形成する左右片3、4は垂直な板状をなしているがこれらの裾部5、6はその上縁が徐々に前側に彎曲延出され終いには逆U字状部7、8を形成し、しかもこれら裾部5、6、逆U字状部7、8は上記左右片3、4に対し前方に緩やかに彎曲している。
上記逆U字状部7、8の先端には連繋片9、10が垂設していてその下端間に、上面を弧状としかつ前後面をくぼませた横桟11を架設している。
しかして上記ハンガー主体a、連繋片9、10および横桟11は所定の型を使用して硬質合成樹脂により一体的に成型されるもので、山形を成すハンガー主体aは連繋片9、10間に架設の横桟11によつてその強度を著しく増大する。
叙上のように山形のハンガー主体aは板状の左右片3、4に対し裾部5、6および逆U字状部7、8が前方に緩やかに彎曲し、かつ裾部5、6が左右片3、4に続きその上縁を徐々に前側に彎曲延出しその終端を逆U字状部7、8として、その全体的形状を人体の肩部に相似せしめたので、洋服等を自然な格好で掛けることが出来、したがつてこれらに型くずれをさせることがないものである。
また横桟11は前後面をくぼませ上面を弧状としたからこれに二つ折りして掛けるズボン等に折目を派生させる虞れなくしかもこの横桟11は連繋片9、10間に架設したものでハンガー主体aの逆U字状部7、8との間に空隙をするためズボン等の掛け外し作業に支障を与えたりすることがないのは勿論この横桟11は逆U字状部7、8の下方間に位置しハンガー主体aの頂部より前方に在るのでこれに掛けたズボン等がハンガー主体aに掛けた洋服等に悪影響をおよぼすことがない。
さらに本考案は合成樹脂製であるから成型が簡単であると共に軽量で出荷輸送、取扱いに至便であり、かつハンガー主体aは同一の厚さの合成樹脂板を撚回させて形成したかのごとき形状で特に肉厚部を必要としないため材料も節減できる等実用上幾多の効果を有する。
実用新案登録請求の範囲
山形を成す硬質合成樹脂製のハンガー主体aはその頂辺を形成する左右片3、4が垂直な板状でこれに続く裾部5、6の上縁を徐々に前側に彎曲延出させてその終端に逆U字状部7、8を形成しかつこれら裾部5、6および逆U字状部7、8を上記左右片3、4に対し前方に緩やかに彎曲させ、逆U字状部7、8に垂設した連繋片9、10間に上面を弧状とし前後面をくぼませた横桟11を架設すると共に、ハンガー主体aの頂点部に基端の膨大部2を埋設して回動自在としたフツク1を挿着したことを特徴とするハンガー。
第1図<省略>
第2図<省略>
第3図<省略>
第4図<省略>
意匠登録証添付の写真
図<省略>